ニコ日記

簡潔に 書いたつもりが 長々と

iPhone4で思う「真摯」な企業とそうでない企業

2008年7月、日本で初めてiPhoneが発売された日に衝動的にiPhone 3Gを契約してから早2年。
待ちに待った新機種iPhone4が大方の予定通り発表された。
本日予約が開始されたので、早速仙台のApple Storeに予約に行ってきた。
解像度が従来の2倍になったRetina(網膜)液晶とかHD動画撮影とかがウリだというけど、あのもっさりした3Gを使い続けた身としては、iPadと同じ45nmプロセスの高速プロセッサ「Apple A4」を積んでることが最大の魅力だと思う。


どうやらA4の製造は、最近SoCやファウンドリ事業に力を入れ始めたSamsungが請け負ってるらしい。
もう日本はSoCの分野でも完全に追いて行かれたという感じを強く受ける。
10年前にSamsungのHDDレコーダを使ってみて「こりゃだめだ」と思っていた自分が現在のSamsungの躍進を微塵も予想できなかったように、日本のメーカーの誰もが同様に思っていたことだろう。
しかし、かの企業は当時の李健熙(イ・ゴンヒ)会長の「妻と子以外は全て変えよう」というスローガンのもと真摯に改革に取り組み、今は名実ともに世界最高の電子機器・半導体メーカーになってしまった。
その結果、今ではアメリカに行けばどこに行ってもSamsungの広告ばかりで、純利益は日本の大手電機メーカーの合計より遥かに大きい。
確かに、学会でもSamsungの部長クラスの人の発表は同じクラスの日本人の発表なんかより格段に英語が上手い。日経の記事でもSamsung社員教育や研修に非常に力を入れていると書いてあった。
とどのつまり、Samsungと日本のメーカーの差は地道な努力の差ということなのかもしれないが、今回のiPhoneのA4の件を見るとそれだけではなさそうだ。


日本の半導体メーカーはもう何年も前から「日本の半導体の生きる道は低消費電力なSoCだ!」といって、SoCに重点的にリソースを割いてきたはずなのである。
低消費電力なSoCは高付加価値なモバイル機器には欠かせないもので、その指針は現在のモバイル機器の隆盛を見ればあながち外れていなかったのだが、今世界のモバイル機器で日本のSoCを使っている製品なんてほとんどないだろう。
日本の携帯電話メーカーはちょっとは使っているかもしれないが、ガラパゴスケータイと揶揄されるように日本のケータイなんて世界市場からみたら微々たるものに過ぎない。
今の携帯電話は、新興国向けの機能を絞った低価格なものと高機能なスマートフォンが世界市場の大半を占めていて、それぞれ半導体に求められる性能と価格の要求が異なるが、日本の半導体は結局どっちつかずでどちらに対しても訴求できるものを作れていない。
日本のメーカーは、将来を見据えて「売れる技術」を徹底的に研究開発する経営センスと決断力が圧倒的に欠けているのだが、その点Samsungも昔は同様だったのだが、近年は強い反省をもって上手く脱却をしているように思える。
まぁ、韓国の危機的な財政状況とか政策的なSamsungへの優遇とかを考慮すると若干見方は変わるかもしれないが、電子産業だけで言えば、このままでは日本はコンペティターとしてすら見てもらえず、ただ衰退市場を抱える隣国という認識になってしまうかもしれない。
そこで日本のメーカーは再度奮起して戦後の奇跡と同じことを起こせるか?というと、多分無理だろうな。


しかし、今日のiPhone4の予約は本当にひどいものだった。
たかが予約なのに、ソフトバンクの店舗契約用サーバーがダウンして2時間も待たされた挙句、再度日を改めて来いという始末。
孫社長は最近ツイッターで独特の広報活動をしていて、ユーザーからの要望に「やりましょう」のリツイートで返すという手法を繰り返していた。
今回のiPhone4の予約でも、店舗に行けないからオンラインショップで予約できるようにして欲しいという要望に対して「やりましょう」と大見得を切ったのだが、今回それが完全な安請け合いだったということが露呈してしまった。
まるでどこかの国の前の首相みたいである。

同様のことは昔もあった。孫氏は、ADSL黎明期にYahoo!BBを立ち上げて強烈な低価格化を推し進めたのだが、あのときもサポートの酷さが喧伝された。
当時もYahoo!BBの安さに惹かれてついつい手を出した身としては、とにかく「品質」が二の次の企業なのだなぁ再度痛感させられ、二度とソフトバンクには期待しないと心に誓った。
まぁ、顧客に少々嫌な思いをさせてもトータルでは利益を生むので了としているのかもしれないが、こんな「真摯さ」に欠けた経営手法は個人的にはどうかと思う。
日本の企業が「真摯さ」でも劣ったら、それこそジリ貧だよな・・・